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第201話

それぞれの席に戻った後、弥生は真剣に仕事に没頭し始めた。

その前に、二人は明日ばあさんを病院に連れて行くと約束したが、仕事が終わって家に帰ったらばあさんに話すはずだったが、離婚の話はしなかった。

前回は意地になって、朝早く市役所に駆け込んだが、結局ばあさんの手術は順調に進まず、離婚できなかった。

今回は弥生は焦らず、ばあさんが手術を終え、健康な状態に戻ったら市役所に離婚届を出しても遅くないと考えた。

それに、非常事態を防ぐためでもある。

彼女自身はそう考えていて、瑛介も同じ考えを持っているようだ。

昼頃には、弥生はいつものように粥を買いに行くことにしたが、今日は他の種類の野菜粥を試してみたいと思っていた。

しかし、店の主人に声をかけようとしたとき、携帯が鳴った。

弘次からの電話で、弥生は少し驚いた。数日前に知ったあの駐車場に目を向けた。

確かに、見覚えのある車がそこに止まっている。

振り返ると、車の窓ガラスが下がって、弘次の鋭い顔が現れた。彼は携帯を持っている手を振って、暖かい笑みを浮かべていた。

ここで彼に会うことに、弥生は少し驚いた。彼女はためらってから、相手の方へ近づいた。

「どうしてここに?」

弘次は唇を窄めて、「ちょうど近くで打ち合わせがあって、君に会えるとは思わなかった。運がいいね」

「そんなに偶然?」

弥生は疑っていた。仕事で近くに来たとしても、ここに車を止めて、自分が出かけた時にちょうど彼から電話がかかってくるとは考えにくい。

彼のネクタイにはまだ彼女が贈ったネクタイホルダーが付いているのを見て、弥生の表情が少し緩んだ。

弘次はそれに気づき、眉を上げた。

「信じないのか?」

弥生は微笑んで、肯定も否定もしなかった。

弘次はすぐに自分を弁護しようともなく、笑って言った。「偶然会ったんだし、一緒に食事に行かないか?」

弥生は躊躇って、断るつもりだった。

「前、送別会のことで、補償する約束をしたよな?」弘次が突然彼女の言葉を遮った。

「.......」

確かに以前約束したが、結局彼と一緒にお粥を食べに行ったものの、彼はほとんど食べていなかった。

気まずいことだ。

「じゃあ、いいわ」弥生は仕方なく認めた。

彼女が同意したので、弘次は車から降りて、弥生に
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